古の、天女伝説の残る島。
 逃げるようにやって来たこの島であたしが出逢ったのは、
 口うるさくてわがままで人使いの荒い、
 天女――







の、『羽衣』だった。







おしゃべりな布との出逢いから始まったその夏は、
ちょっと甘くて、ちょっと怖くて、ちょっと哀しくて――

だいぶ、はちゃめちゃだった。












「あたし、ここにいたいよ。羽衣とか基とか、皆と一緒にいたい」
――高槻 あかね 十五歳・主人公







『あの子に逢わなきゃいけないの。わたしはあの子の羽衣だからね』
――羽衣(うい) 天女の羽衣







「あかね。泣き方、教えてやろうか」
――瀬戸 基 十六歳







「ねぇあかねちゃん。あかねちゃんは、ちゃんと全部言った?」
――瀬戸 若菜 十歳










夕立。ひみつ基地。浴衣にホタル。海水浴。
繋いだ手と毎日の口喧嘩。
いくつかの謎と、いくつもの思い。

その島には、大好きがいっぱい詰まっていた。










「君たちは、天女の子孫なんですよ」
――くまさん大島 順司・民俗学者




「きょうちゃんはずっと一番だけんども、あかねも同じくらい好きだっべっ!」
「ド田舎だけど、いいとこだよ。あんたにも見て欲しい」

――高槻 時雨/桔梗・あかねの祖父母




「女の子にちゃん付けされるのは大歓迎だねぇ」
――都築 青太 十六歳







天女の子孫『あまつ三家』
高槻・都築・瀬戸――

天女は天には帰らなかったの?
どうして羽衣がここにあるの?
羽衣伝説の真実は――?











私はおまえを、失いたくない。
――伊嵯孤命(イサゴ)  天女の羽衣を盗んだ男











封印されてきた古の恋物語が、
今、紐解かれていく。











私は、あの方を愛しています。
――天月夜姫(ツクヨ)  舞い降りた天女













これはあたしの、ひとの物語。


古のと、

現代のと、

大好きな友だちの物語。









十五の夏、あたしに訪れた――















     おしゃべりな御伽草紙













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