貴女が、強い子で良かった。







大平市立花川総合高等学校。
通称「花総」。
ここには――





奇妙な養護教諭がいる。
















強く孤独な少女
『あたしは、この場所で生きていく。梨花たちと一緒に。
 あたしの全てを、受け入れたまま』
前田 あや







オネエ言葉の養護教諭
『ここ以外に居場所なんてないのに、ここでもないのなら、
 どこに居場所があるんだろうって、アタシはずっと考えていたわ』
一条 椿










覚えてる。
去年の入学式。
桜の花を見上げる、あの横顔。








全てを拒絶するような、孤独を好む大人の目――








信じ続ける者
『大丈夫だよ、あやちゃん。
あやちゃんは何があっても、梨花が守るから』
前田 梨花








見守り続けてきた教師
『椿。前田は、百合子の代わりじゃないぞ』
井伊 太蔵










 世界が揺れた。
 そう思った瞬間には、揺れは収まっていた。
 そして、世界には――



 彼女たちだけが、残される。








「誰も、いない……?」







黒き笑みを浮かべる少年
『カッコイイお姉さんだ。参ったな、気に入っちゃったよ。
味あわなきゃ』
アレクサンダー ヴェルト






空間を操る無機質な瞳
『あの子は違います。危ないんです。判るでしょう』
ニナ フランシスカ ルッツ











だから、信じられなかった。
普段の笑顔も、飄々とした言動も、全て偽物に思えた。
今なら、少しだけ、判る。






それは、こいつの、精一杯。











未だ揺れる雨の残り香
日野 百合子






嫌いだ。
本心が読めなくて、怖くなるから。
大嫌いだ。
大嫌いだけど。
少しだけ、判るから。


信じてみようと、思った。











虹を見るには、雨を我慢しなければならない。(ドリー・パートン)









それはオネエ言葉の保健室の先生と、
口の悪い女子高生の不器用な関係。
恋愛風味の現代学園ファンタジー





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